結論です。チタンバルブ付いてますか?始動性が悪い時の原因の多くはバルブ摩耗による圧縮漏れです。
表題に対する結論を先にお伝えします。
吸気バルブ(IN)及び排気バルブ(EXH)のシール性が不足して圧縮不足が発生している可能性が大きいです。
対応はヘッドのバルブシート面のメンテナンスとチタンバルブ交換が必要になると思います。
エンジンの腰上をバラす必要があります。
結構大がかりで、費用が発生しますがコンペティションモデルの4stMX車ではルーテイーンのメンテ内容の一部ですので、あまり驚くほどの内容ではありません。

私のMX車のエンジンの始動性が最近悪いです。何が悪い?
今日は4stMX車の冷間始動性のお話しです。この相談もよく聞く話しです。
例えばこんなユーザーその①。
中古のキック始動のCRF250を買った。半年ほど乘った。最近チョークを引いてもエンジンの始動性が
すこぶる悪い。過去のメンテナンスの素性が分からないので何が悪いか結構怖いところ。
何から始めたらいいか?
例えばこんなユーザーその②。
CRF250に3年ほど乗っています。レースやEDには年1回参戦するくらいで、たまの休みに
ファンライドをする程度です。最近ちょっとづつ始動性が悪くなっているのを感じています。
でも頑張るとまだ掛かります。
エンジンが始動するとそれ以外は特に悪いところは無いです。何が悪いのでしょうか?
例えばこんなユーザーその③
あさイチの始動性は良い。2本目に乘ろうとすると、もはや全くエンジンが始動しない。
キックばっかりして疲れて今日はもう帰ってきました。
なんだか暖まると逆にエンジンの掛かりが悪くなるみたいな気がする。これって何???
こんな時は以下を確認!
良い火花(問題なしは次へ)
1つ目はプラグと火花。
最近も私の友人のS/M PROクラスユーザーで走行中失火を重ねて、いろいろ解析検証事後TEST
やった結果、失火の原因はプラグだったという事例がありました。
2stキャブ車の時代にくらべ、4stFiのセルONLY車両は昨今プラグメンテナンスなんてすることは全くなくて、
乗りっぱなしの軽自動車のようにノーメンテで寿命まで使う事がある様に感じています。
もし始動性に不具合を少しでも感じたら、真っ先にプラグ交換してください。
プラグは例えばHONDA純正部番品でもAmazonで売っている時代です。
良い燃料(問題なしは次へ)
2つ目は燃料。
4stキャブ車の場合は燃調(キャブセッテイング)や燃料系の詰まりなどの不具合から検証する必要がありますが、”始動性”だけなのか、”始動後の走行も不具合があるのか?”で今日のお題としての問題の切り分けは可能です。
始動性だけ悪いならば、チョークやバイスターなどのバイパス通路の閉塞確認。
始動後の走行時も調子悪いならば、スローやメイン系の通路閉塞。
FI車ならば燃料ポンプを含めた燃料噴霧状態の確認。
ま、でも始動TRYの過程でマフラーがガソリン臭い、プラグはガソリンで濡れる、という状態なら燃料系も問題ないです。
本題の良い圧縮
3つ目は圧縮。コンプレッションゲージなどで実測する方法もありますが、圧縮が低い場合の多くで
発生している事象がありますのでそれを確認する方法があります。
タペットクリアランスorバルブクリアランスの確認です。
例えばIN0.13㎜、EXH0.28㎜とかのクリアランス設定です。車種/機種によって要確認です。
シックネスゲージでクリアランスが減少していないか確認します。クリアランスがINバルブ側、
EXH側いずれかが減少したりクリアランス自体が完全に無くなっていたりしませんか?
クリアランスが無い場合は、バルブが空きっぱなしになっている可能性があります。
まれにデコンプの破損等がありますが、これも上記タぺクリ、バルブクリアランス確認時に確認可能です。

皆さんの疑問と回答です
圧縮漏れが発生するとなぜ始動性がわるくなる?
空気を圧縮すると温度があがります。でも燃えるほどではありませんよね。
ガソリンもそのままでは燃えにくいですよね。何かきっかけとなるものが必要です。
上記2つが良い条件で重なりそこに火花があると着火して燃焼します。
内燃機関ってやつです。
良い圧縮、良い燃料、良い火花の三拍子が揃うと皆さんが欲しい馬力も出ますが、
始動性もすこぶる良くなります。調子の良いENGがアイドルから安定しているアレです。
圧縮漏れが起きる原因に話しを進めます。
なぜ圧縮漏れに至る?
チタンバルブに問題はあります。でもチタンバルブを責めないでくださいね。
チタンバルブの量産化によって皆さんは数馬力~4気筒なら数十馬力の恩恵を受けています。
チタンバルブのバルブシートとの接触面”バルブフェース面”が、摩耗します。
摩耗するとバルブは押し込まれます→エンジンとしてはバルブが同弁系部品に突き上がりますので、
タぺットクリアランスやバルブクリアランスは減少します。
最悪はクリアランスが無くなります。→バルブが空きっぱなしになります。
チタンって表面硬度を上げるのが技術的に大変難しく、酸化被膜とかアルマイトとかしか
いまだに無いんです。
鉄にあるような浸炭とか窒化とかのような最表面硬度だげバリバリ上げる技術が無いんです。(超マニアックね笑)
だから市販量産のコンペティションモデルに昨今採用されているTiバルブ装着車は
遅かれ早かれ、バルブフェース面が摩耗したら、ヘッドはぐって、バルブ交換するしか
ありません。

なぜ暖気後の方が始動性が悪い?
エンジンが暖まるとバルブの全長が数ミクロン伸びますので、”タぺクリorバルブクリアランス”が
詰まります。バルブが開きっぱなしになる方向です。圧縮が漏れやすくなる方向なのです。
だから、あさイチの冷間時より、一度乘った後などの温間時の方がエンジンの始動性が悪くなります。
よって、バルブ交換等をせずとも、一時的にはタぺクリ調整して少なくともバルブが閉じやすい
ASSY寸法に組立てて上げれば、始動性はある程度良くなる可能性はあります。
バルブフェース面の表面処理が無くなっている場合はまたすぐ摩耗が進行して、
タぺクリは減少します。
Tiバルブ車はタコ棒厳禁
フェース面が摩耗したなら、ヘッド側はシートカッターでシート面を再構築して、
バルブは”タコ棒”ですり合わせすればいいじゃんってのは昭和の時代の量産車までなのです。
Tiバルブはフェース面に新品時は量産技術的に可能な最大限の上質な表面処理が施工されています。
しかしこの表面処理が摩耗等で消失した時点でその設定寿命は終了です。
その後は摩耗が一気に進行します。鉄バルブ以上の摩耗進行スピードです。
当然新品時にタコ棒ですり合わせとか行いますと表面処理が剥がれていきなり寿命終了します。
修理費用について
Tiバルブは単品で各社1本5000円から1万円。
IN/EXHでバルブのみで部品代2万~4万円。
ヘッドのバルブシート面再構築にはシートカッター等の専用治具が必要で購入すれば数万円。

その他エンジン腰上のシリンダー及びヘッドの全バラ工賃と各GSKT等必要交換部品代で数万円。
どうせなら、ピストンやリング交換もすると更に部品代で3万円前後。
結果合計で腰上全バラ、部品代だけで5万円前後ですね。ご参考です・
やっぱ2stですよね????
バルブの早期摩耗を抑制するには?
IN/EXHのバルブフェース面が早期摩耗する原因の一つを上げるならば、エアクリーナーのメンテ不良です。
砂やほこりを吸い込んで燃焼室に送り込まれる過程、燃焼後排気される過程で
それぞれ、インテークバルブやエキゾーストバルブが閉じるときに異物をシート面に噛みこんでしまいます。
異物を噛みこむとその凹凸や打コン傷をきっかけに摩耗が始まってしまいます。
エアクリーナーエレメントのメンテナンスや、吸気系接続部経路からの接続不良等からの
2次エアー吸い込み等による、異物の吸い込みには最大限警戒し、対応しましょう。
まとめ
今日は昨今の4stモトクロス車のエンジン始動性が悪い時の原因と修理について書いてみました。
ひと昔前には夢の技術だったチタン合金製のエンジンバルブを
イマドキのちょっと高価な量産車には採用しています。
航空宇宙技術の素材ですっ!
ただしその高性能とは引き換えに、定期的なメンテナンスは当然必要となっています。
もし今回の記事のような不具合が発生した場合は慌てず、
この記事を読んで構造や原理原則を理解して頂き、
4stMX車のイマドキのルーティーンだと思って交換してあげてください。
その性能は復活します。
またね!
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