2STのキャブ調整って、本当に沼ります。
メインジェットを替えて、
スロージェットも替えて、
ニードルクリップも動かして、
エアスクリューも何回転も試した。
それなのに――
「昨日は調子よかったのに、今日は全然ダメ」
「何が正解なのか分からなくなってきた」
正直、僕も何度もそうなりました。
でも今なら分かります。
キャブが決まらない原因は、必ずしも“キャブそのもの”にあるとは限らない、ということを。
この記事では、
僕自身が実際にハマった経験をもとに、
- なぜ2STキャブ調整は沼りやすいのか
- なぜ「ちゃんとやっているのに直らない」のか
- どう考え方を切り替えれば抜け出せるのか
を、できるだけ分かりやすく整理していきます。
「自分だけ下手なのかも…」
そう思っている人ほど、ぜひ読んでみてください。
キャブを疑い続けたが、原因は“キャブの外”だった
👇これは私の3MA5(1990TZR250のキャブ。調子悪くてキャブいじり始めたとき)

キャブ調整が沼ると、ほぼ確実にこうなります。
調子が悪い
→ キャブだ
→ ジェットを替える
→ まだダメ
→ さらにキャブを疑う
僕もこのループにどっぷりハマりました。
でも、後から振り返ると、
キャブはちゃんと仕事をしていたんです。
実際の原因は、
- 吸気系の微妙な二次エア
- リードバルブの劣化
- 排気系の詰まりや仕様変更
- タンクキャップの詰まり
- プラグ
といった、
**「キャブの外」にある要素でした。
キャブは“結果が見えやすい”ので疑いやすい。
でも、それは同時に 一番濡れ衣を着せられやすい部品 でもあります。
日によって調子が変わる=セッティング不良、とは限らない
👇桜満開の時期の白河と2000CR250R 好条件で特に何もせずとも調子が良さそう

「昨日は普通に走れたのに、今日は全然ダメ」
これ、2STではよくある話です。
多くの人はここで
「セッティングが合ってない」と判断しますが、
実はそうとも限りません。
- 気温
- 湿度
- 燃料の状態
- プラグのコンディション
これらが少し変わるだけで、
2STは “症状だけ”が大きく変わって見える ことがあります。
つまり、
セッティングがズレた
のではなく
“ズレたように感じただけ”
というケースも、かなり多いです。
この判断を間違えると、
本来触らなくていいジェットを触って、沼が深くなる んですよね。
「薄い・濃い」の判断がズレていた

キャブ調整で必ず出てくる言葉が、
- 薄い
- 濃い
ですが、
この判断がズレている人は意外と多いです。
正直、僕もそうでした。
たとえば、
- 回らない → 濃い?
- 吹けない → 薄い?
こうした“症状だけ”で判断してしまうと、
真逆の方向に調整してしまうことがあります。
特に2STは、
- 急開すると吹けない
- 無負荷だと調子がいい
といった 紛らわしい挙動 をします。
「プラグを見れば分かる」と言われますが、
短時間走行や中古のプラグ、条件が揃っていない走行状態では、
プラグも普通に嘘をつきます。
部分開度ごとの影響を、頭では理解していた“つもり”だった

メインジェット、スロー、ニードル。
役割は、誰でも一度は勉強します。
でも実際には、
- 「今の症状はどの開度なのか」
- 「どこが被って、どこが足りないのか」
を 走りながら正確に切り分ける のは、かなり難しいです。
僕も理屈は知っていました。
でも、実走では混ざってしまっていました。
結果、
- とりあえずメインで傾向を見て
- ニードルクリップ段数でピンポイントを探るが
- 良く分からなくなって更にメインをいじる
- 最後はリヤサスとかいじりはじめる笑
という、完全な迷走状態に。
ここで重要なのは、
理論を疑うのではなく、自分の判断精度を疑う ことでした。
キャブ調整がうまくいかない人ほど、順番を飛ばしてしまう

沼っているときほど、
人は「早く直したい」と思います。
その結果、
- 本来確認すべきことを飛ばす
- 一番変化が大きい所から触る
という行動を取りがちです。
でも実は、
キャブ調整がうまくいかない原因の多くは、
順番を守れていないこと
でした。
これは技術力の問題ではなく、
焦りの問題 です。
沼から抜けるためにやった、たった3つのこと

最終的に僕がやったことは、意外とシンプルでした。最初は整理整頓する。
メインジェットは番手で整理。いま何番を使っているか残パーツでわるように。Amazon.co.jp
道具を整理したら一旦俯瞰して以下の3つをやってみます。
① キャブ以外を先に疑う
吸気・排気・リード・燃料。
ここを一度リセットしました。
例えば私の記事のこと2つ
2stエンジン ガス欠焼き付き原因はタンクキャップ!?
CHAMP CXのエンジンの始動が調整悪い、焼きつく、初期はとにかくキャブセッテイングばかり
変更しました。全然治ることなく、シリンダーも1セット買い増しました。
5月のGWから盆前まで土日は走行TEST→焼き付き→おして帰る→焼き付いたシリンダーを修正する
を繰り返しました。ある日、2stOILポンプまわりが信じられなくなったので、混合GASで走行
してみる事にしました。CR250の樹脂タンクをCHAMP CXのメットインスペースに置いて走行
しました。すると焼きつかない事がわかりました。そこからさらに1か月燃料系をクロスチェック
の走行を繰り返し最終的にたどり着いた”原因”はCHAMP CXのガソリンタンクキャップ
エアベント詰まりによるタンク内負圧→GAS供給STOP→薄くて焼き付きでした。
そしてもう一つ例えばこの記事
2stエンジン かからない〜!リードバルブを要確認です。
CR250Rの始動性が悪い以外にも、普段ありえないくらいメインジェットを濃くしなければ中間開度が
薄くて急激に加速するので乗りにくくなっていました。やはりこれもメインジェット以外に
ジェットニードルやエアクリーナー、チャンバーまで交換しを何度も確認しました。
もう諦めモードだったとき、ある日キャブを外したついでに久しぶりにキャブインシュと
リードバルブBODYも外してみました。
するとなんとリードバルブの板が先端が一部欠損していて、要するに吹け抜けっぱなしの状態でした。
原因はリードバルブ欠損による1次圧縮GASの吹き返し。混合GASが正しく燃焼室(2次圧縮のい部屋)に
供給されないために燃調が極端に薄くなっていました。
最後にこの記事
AB07ホンダ初代タクトカスタムまとめ チャンバーは?
チャンバー1本目はKAWASAKI KX65のチャンバーベースで製作。
最高速アベレージ87㎞/h。MAX92㎞/h。
吸気側やベルコンレシオなどやり尽くした感があったので満を持して
チャンバー2本目製作。ベースはSUZUKI HiUP R用アフターマーケット製。
チャンバーのみ組み換えで、メインを3ランクUPくらいからしTEST走行スタート。
そもそも低速&中速は”どスカ”なことに気が付き途中からベルコンセッテイングを
高回転変速仕様に変更。その後再度キャブセッテイングを行うがどんなに薄くしても全くVMAXは伸びない。
最高速が出ないというか、そもそも60キロ前後のトルク感が全くないので
実走では8000rpm前後のパワーバンドまで到達しない。
ちなみにこのチャンバーはスタンド上の無負荷では11000rpmまで廻った!
訳が分からず、結局チャンバーとキャブ、駆動系セッテイングを全部もとに戻すと元の走りを取り戻した。
原因はチャンバー。改修は断念したが、予測した原因はシリンダ出口直後のエキマニが細く更に一部急激に曲げたため超高回転で狭いパワーバンドのピンポイントチャンバーになってしまっていた様子。
教訓はキャブ以外もまんべんなく疑う平常心が必要です。
② 触る場所を一箇所に限定する
キャブ以外を確認し終えたら、キャブに戻ってみる。そして「今日はここだけ」と決める。
変えすぎない。
引用元:本田技研工業株 2003YM CR125 オーナーズマニュアル
そうですね。キャブセッテイングってメインジェットが受け持つ範囲と
ジェットニードルが受け持つ範囲とストージェットが受け持つ範囲って
だいたい分かれているので頭で考えてピンポイントで変更を始めると思いますが
多少良くなってくると”合わせ技”で更なる改善を求めたくなるんですよね笑
すると途中から訳が分からなくなってきてしまいます。
更にはMXの場合、ライダーが確実に疲れてきますので判断が鈍ります。
よって出来るだけ順序だてて、更には多人数で乗って判断すると間違いないです。
MOTO GPの車両づくりのようにあえて複数のライダー、複数のチームで
同一仕様を乗ってもらいそれぞれコメントを集め解析するように。
例えばわたしの記事ではこれ【初心者OK】2スト250ccキャブセッティング方法|夏仕様の実走調整記録
4人でセッテイング詰めてもせいぜい4パターンで夕方閉店ガラガラが現実です!
③ ダメでも“戻せる状態”を作る
最後はキャブセッテイングもそれ以外も、昔調子良かった状態に戻してみる。
元に戻せる=精神的に冷静になれる。
この3つを意識するだけで、
キャブ調整は一気に楽になりました。
例えば私の記事ではこれCR500R Aluminum Frame Conversion ①eng mounted
1995CR500Rのエンジンが2022CRF450Rのフレームにそのまま搭載できます。更にチャンバーも
ノーマルチャンバーがどこも改修することなく使えるのです。もちろんアフターマーケットのプロサーキット
チャンバーも無改修で組付け出来るのです。これって何が言えるかというと、フレームが変更されたことによってエンジンのDR(ドライバビリティ)も変ったかのように感じてしまう事が間々多々あるのですが、純正どノーマルチャンバーと比較してみる事が出来るという仕様なのです。チャンバーをノーマルに戻して、キャブセッテイングも純正払い出し仕様に戻してみる。これで当時の鉄フレームのときのように走るかどうか。
OEMの開発でもたまにALL NEWをしてしまう事があります。しかしこの手段系は迷ったときに迷った部分だけ元に戻して検証することが出来ないんです。
発展途上の開発現場では結構致命的です。ちょっと戻すか、前年度仕様にまで戻すか。。
私のアルミフレーム500も純正チャンバーや純正サイレンサーに戻したり。。。
どうでもいいけど500のノーマルサイレンサーはある意味アイデンティティやな。。

大きく飛躍したい気持ちは理解しますが、小さくPDCAをまわして改善を積み重ねた方がいいのはMOTOGPもDIYのバイク改造も全く同じですぜ!!!!
まとめ|あなたが沼っているのは、下手だからではない
2STキャブ調整が沼るのは、
- 才能がないから
- センスがないから
ではありません。
考え方の順番が、少しズレていただけ です。
この記事が、
- 「自分だけじゃなかった」
- 「一度落ち着こう」
そう思えるきっかけになれば嬉しいです。
キャブは、ちゃんと向き合えば必ず答えてくれます。
今日はこのへんで。またね。


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