2ストのキャブセッティングに慣れてきたら、いよいよ次のステップとして触れたいのが「ジェットニードルのクリップ位置調整」です。
この調整は、スロットル開度の中間域に大きく影響し、走りのフィーリングを左右する重要なポイント。クリップの位置を変えることで、ジェットニードルが上下し、テーパー形状とスロットルバルブの関係が変化します。
つまり、同じ開度でも燃料の噴き出す量を微妙にコントロールできるわけです。
この記事では、ジェットニードルの構造とクリップ位置の役割、そして具体的な調整手順を解説します。初心者向けのエアスクリュー調整から一歩進んで「より自分の走りに合ったセッティング」を求めたい方におすすめの内容です。
アクセル中間開度のガソリンの吐出量が変わります!
ジェットニードルはクリップの位置を基準にスロットルバルブに固定されています。
よってクリップの位置(段数)を変えると、スロットルバルブとの相対的な位置関係が変わります。
スロットルバルブは、空気の量を調整しています。
そのスロットルバルブにジェットニードルは付いていますので、吸い込まれる空気の量に対して
吐出されるガソリンの量の比率変わります。

空気の量に対してガソリンの量が変わるのです。
アクセル中間開度の空燃比が変わります。
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安心してください。図で影響する範囲を示します。
今回は広範囲に影響します。
ただし、アクセル全開域には影響しませんので、2st特有の焼き付きにはあまり関係ありません。
安心してください。
引用元:本田技研工業株 2003YM CR125 オーナーズマニュアル
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ジェットニードルのクリップ段数はどんな時に変更するの?
アクセル中間開度でもたつくとき。
あるいは、アクセル中間開度でパーシャルせず、勝手に吹き上がるとき。

例えばどんなシチュエーションや症状のときに調整するの?
2stモトクロス車、大きなRのコーナーリング中にパーシャルが扱いずらい
勝手にふけ上がるor駆動力が出てこない部分がある。
微妙なスロットルワークで駆動力をコントロールしたい時にリニアな特性が試されます。
ロードでは例えば鈴鹿のS字区間。
全閉(1/3開度)→パーシャル(3/4開度)→全閉(1/3開度)のような領域の出力特性。

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2stモトクロス車、ジャンプの飛びだし直前で出力のコントロールが難しい
特に250CCくらいの排気量がある場合、ジャンプ直前で少しスロットルを緩めて、飛び出しに
合わせて駆動力を調整しながら飛ぶことがありますが、この部分で、駆動力が出すぎたり、
出なかったりします。フロントが上がりすぎたり、下がり過ぎたりする可能性があります。

2stモトクロス車、小さなコブを使った抜重ジャンプでピックアップが悪い
全開でもなく、全閉でもなく、中間開度でギャップに進入して、あるコブでサスを入れて飛ぶような
シチュエーションでエンジンの中間開度のツキが悪いとタイミングよくリヤサスを圧縮することが
できませんので、飛び上がることができません。抜重と荷重のメリハリを出す事ができない状態。

中間開度の燃調コントロールの原理と調整方法
キャブの燃調コントロールにおいて、簡単なところから。
スロットル全閉では、スロー系で空気とガソリンの量は決まります。
※バルブの微妙な位置を手で押さえながら撮影してるのでキャブが横向きですがご了承ください~。

スロットル全開では、ボア直径とメインジェットで空気とガソリンの量は決まります。

アクセル中間開度の燃調はどうやって決まるか。
第一にスロットルバルブの位置で空気の量は決まりますね。これは分かりかと思います。
第2にガソリンの量はそのスロットルバルブに保持されたジェットニードルによって決まります。

ジェットニードルは軸がテーパー形状です。
ジェットニードルの保持する位置を上下に変更すると吐出されるガソリンの量が変わります。

スロットルバルブとジェットニードルは相対関係にありますので、この位置関係を微妙に調整することで
燃調を薄くしたり、濃くしたり出来ます。
これが、燃調コントロールの原理、中間開度の調整方法です。
具体的な作業方法
ジェットニードルのクリップのセッテイングについて。
一般的に量産車の標準位置はクリップ段数が3段あったら中央(2段目)です。
クリップ溝が5段あったら3段目が標準位置です。
クリップ段数を説明するにあたり、ジェットニードルのテーパー部を”下向き”として説明します。
中間開度でパーシャル(駆動力一定)せずに勝手にふけ上がるとき
ジェットニードルのクリップを標準位置から一段下にセットします。
スロットルバルブに対して相対的にジェットニードルが引っ込んだ状態になります。
吸入空気量に対して相対的にガソリンは多く流れます。
燃調は濃くなります。濃いと一般的に出力は下がりますので、緩慢な特性になります。
中間開度で徐開しても、駆動力が増してこない。もたつく。
ジェットニードルのクリップを標準位置から1段上にセットします。
スロットルバルブに対して相対的にジェットニードルが出っ張った状態になります。
吸入空気量に対してガソリンは少なく流れます。
燃調は薄くなります。薄いと一般的に出力は上がりますので、
スロットルワークに対して俊敏にリヤタイヤの駆動力が反応するようになります。
まとめ
今日は、中級編!2stキャブセッテイング ジェットニードルのクリップ段数調整でした。
結構難しい領域ですが、その出力特性の違いが体感できるようになると、
かなり常用するセッテイングメニューとなります。
特にミクニ TMX改などはジェットニードルのテーパー形状が特異なものですので、
きっちり合わせる必要があります。
クリップを飛ばして現地で紛失しませんように。
それではまたね。
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