初級編!2stキャブセッティング ジェットニードルのクリップ段数調整

MODIFICATION!

2ストのキャブセッティングに慣れてきたら、いよいよ次のステップとして触れたいのが「ジェットニードルのクリップ位置調整」です。
この調整は、スロットル開度の中間域に大きく影響し、走りのフィーリングを左右する重要なポイント。クリップの位置を変えることで、ジェットニードルが上下し、テーパー形状とスロットルバルブの関係が変化します。
つまり、同じ開度でも燃料の噴き出す量を微妙にコントロールできるわけです。

この記事では、ジェットニードルの構造とクリップ位置の役割、そして具体的な調整手順を解説します。初心者向けのエアスクリュー調整から一歩進んで「より自分の走りに合ったセッティング」を求めたい方におすすめの内容です。

クリップの段数変更で何が良くなるの?

今日は2stキャブレターのジェットニードルクリップ段数調整について。

適切に調整すると大きく3つの改善点が生まれますのでまずここからご紹介します!

①コーナーが曲がり易くなる!

駆動力一定で曲がりたいのに、勝手にエンジンが吹け上がったり、逆にエンジンの吹けが悪いと

曲がりにくいものです。

特に大きなRのコーナーでは通過時間が長いだけに、ごまかしがききません。

一気にタイムをロスします。

クリップ位置を調整してエンジン出力のコントロール性が良くなると

コーナーリングは一気に上手になります!

②ジャンプが飛びやすくなる!

ジャンプの飛び出しに合わせて駆動力を調整しながら飛ぶことがあります。

この部分で、駆動力が出すぎたり、出なかったりすると超こわいものです。

フロントが上がりすぎたり、下がり過ぎたりする。

クリップ位置を調整して中間開度のリニア感が高まるとジャンプが飛びやすくなります。

ひねったりできるかも!?

③小さなコブで大きなジャンプ!

中間開度でギャップに進入して、ある特定のコブでサスを入れて飛ぶようなシチュエーションがあります。

エンジンの中間開度のツキが悪いとタイミングよくリヤサスを縮めることができません。

良いタイミングで飛び上がることができないのです。

クリップ位置を調整すると駆動力のキレが良くなります。

抜重と荷重のメリハリをより出す事ができますので、

連続するギャップの中の小さなコブを使ってジャンプができるようになります。

写真は最新の4stに乗るMichael Mosiman選手ですが、この挙動は2st、4st共通です。

ジェットニードルとクリップってなに?

ジェットニードルは半分以上がテーパーです。

上の方に3~5か所の溝がありクリップが固定されています。

そしてジェットニードルはクリップの位置を基準にスロットルバルブに固定されています。

キャブ内ではテーパー部がニードルジェットという穴に挿入されてがガソリン吐出部として機能しています。

これらASSYがスロットル操作によって上下に移動することで、スロットルバルブは空気の量を可変し、

ジェットニードルはガソリンが出てくる隙間をテーパー角度の分だけ可変させるので

ガソリンの吐出量を可変します。これがジェットニードルの基本機能です。

本題に少し触れますね。

ジェットニードルのクリップの位置(段数)を変えると

バルブに対してジェットニードルの位置関係が変わります。

空気の量とテーパー部から噴き出すガソリンの量の相対的な関係変えるができます。

これがスロットル中間開度で燃調(空気とガソリンの比率)を変える事ができる仕組みです。

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その調整方法はどうやるの?

ジェットニードルのクリップのセッテイングについて。

一般的に量産車の標準位置はクリップ段数が3段あったら中央(2段目)です。

クリップ溝が5段あったら3段目が標準位置です。

まずはこの標準位置にセッティングしてどういう症状があるか実走して確認してください。

走行後に以下の①②の症状を感じたら説明のように調整して再度走行確認してみてください。

①中間開度で勝手に吹け上がるとき

スロットル中間開度域でいわゆる”パーシャル”にしているのにエンジンが勝手に吹け上がるとき。

アクセル開度一定にしているのに、駆動力が一定を維持できない。

そんなときはジェットニードルのクリップを標準位置から一段下にセットします。

※写真は分かりやすいように一番下にクリップをセットしています。

スロットルバルブに対して相対的にジェットニードルが引っ込んだ状態になります。

吸入空気量に対して相対的にガソリンは多く流れます。

燃調は濃くなります。濃いと一般的に出力は下がりますので、緩慢な特性になります

スロットル一定(パーシャル)なのに勝手にふけ上がるような事象を抑えることが出来ます。

②中間開度で徐開しても、もたつくとき

中間開度域で”パーシャル”しているときに、駆動力が一定を維持できずに下がってしまうとき。

アクセル開度一定のとき、失火気味になるとき。エンジン回転数が下がってしまうとき。

そんなときはジェットニードルのクリップを標準位置から1段上にセットします。

※写真は分かりやすく一番上にセットしています。

スロットルバルブに対して相対的にジェットニードルが出っ張った状態になります。

吸入空気量に対してガソリンは少なく流れます。

燃調は薄くなります。薄いと一般的に出力は上がりますので、

スロットルワークに対して俊敏にリヤタイヤの駆動力が反応するようになります。

クリップ段数変更で影響する範囲を図で教えて!

ジェットニードルクリップ位置は広範囲な燃調セッテイングに影響します。

ただし、アクセル全開域には影響しません。

2st小排気量特有の焼き付きにはあまり関係ありません。

あくまでもスロットル中間開度でのコントロール性に影響するのみです。

安心してください。

引用元:本田技研工業株 2003YM CR125 オーナーズマニュアル

各開度で空燃比を可変できる原理

①スロットル全閉時

写真のようにスロットル全閉では、スロー系で空気とガソリンの比率は決まります。

ファンネル部に穴が3つ見えると思います。

そのうち2つから空気が入り後ろ側からガソリンとともに吐出されます。

エアスクリューで空気の量は調整されます。

スロージェットでガソリンの量は調整されます。

これがキャブのスロー系の経路と比率調整の原理です。

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②スロットル全開時

スロットル全開では、ボア直径とメインジェットで空気とガソリンの比率は決まります。

ジェットニードルは先端の細い部分がまだ刺さってますが、この位置ではガソリン流量はほぼメインジェット依存です。

これがキャブのメイン系の経路と比率調整原理です。

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③スロットル中間開度

ではアクセル中間開度の燃調はどうやって決まるか?

第一にスロットルバルブの中間的な位置で空気の量は決まりますね。これはお分かりかと思います。

第2にガソリンの量はそのスロットルバルブに保持されたジェットニードルによって決まります。

ジェットニードルは軸がテーパー形状です。

テーパー途中の軸径によって吐出されるガソリンの量が決まります。

これが中間開度の経路と原理です。

クリップを紛失しないマル秘作業方法!

ラジオペンチやプライヤーでクリップを掴んで組みバラシ&組付けしようとすると、だいたい紛失します。

よって私の場合ですが、以下のようにしてクリップを取り外し、逆の手順で組付けます。

クリップがどこかに飛んでいくことは無いのでお勧めです。

①硬い平たい金属面にクリップ合わせ面を下向きにしてセットする

とりあえず今回は目の前にあったノギスの平たい面で作業します。

②そのまま静かにジェットニードルを抑える

ズルっと左右にぶれないように上からそっと抑えます。写真では分かりやすいようにクリップには指をかけていませんが、できれば指でクリップも押さえながジェットニードルを押し付けます。

写真のような位置まで押し付けてクリップをスライドさせます。

③最後に指でクリップを取り外す 

最後に指でクリップを軸から丁寧に取り外します。プライヤー等で行うとだいたい掴み損ねて紛失しやすいので指で作業するのがいいです。②の位置までクリップがズレていると指で取り外せます。

この方法が最もクリップを紛失させたり変形させたりしない安全なやり方です。

組み立てはこの逆の手順でクリップをセットします。

注意点

キャブセッテイングって実走しながら調整することが多いので街乗りバイクの場合は出先でやりたくなります。特にジェットニードルのクリップ段数変更はキャブセッテイングの中では仕上げ/味付けの領域です。更にKEIHINの場合キャブトップを工具無しで取り外すことができるものが多いので、気になるとつい旅先でも作業したくなります。しかし旅先で紛失すると帰って来れなくなるので注意してくださいね。

コンビニでクリップ段数とか変えるのあなただけでしょ!

だって気になるとばい・・・

次のステップ

ここまで読んでくれた皆さんはお気づきかもしれません。

ジェットニードルは軸の太さ違い品やテーパー角度違い品もあります。

中間開度でも1/4開度では薄め、3/4開度では少し濃いめなどニードルで調整可能です。

ピーキーなエンジンをキャブである程度慣らしてフラットな出力特性にする事が出来ます。

FIが無い時代によくここまで制御出来るものを開発したなとマジ感心します。

これはまた次回やりましょう。

まとめ

今日は、初級編!2stキャブセッテイング ジェットニードルのクリップ段数調整でした。

結構難しい領域ですが、その出力特性の違いが体感できるようになると、

かなり常用するセッテイングメニューとなります。

特にミクニ TMX改などはジェットニードルのテーパー形状が特異なものですので、

きっちり合わせる必要があります。

クリップを飛ばして現地で紛失しませんように。

それではまたね。

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