2ストロークのモトクロスバイクに乗っていると、読者さんからこんな質問をいただくことがあります。
「アクセルを開けるとかぶります」
キャブレターセッティングについての質問としては、よくある症状のひとつです。
ただ、この「かぶる」という言葉、実は少し注意が必要です。
なぜなら、アクセルを開けたときに調子が悪くなる症状には、燃料が濃すぎる場合と、逆に薄すぎる場合の両方があるからです。
今回は、2ストモトクロスで「開けるとかぶる」という症状が出たときに、どのように切り分ければいいのかを整理してみます。
「開けるとかぶる」には2種類ある
まず、質問してくれた人が言う「かぶる」という症状を、実際のエンジンの反応で考えてみます。
大きく分けると、次の2種類があります。
① アクセルを開けると一気にエンジンが落ちる
アクセルを一気に開けると、
「ボーッ……」
という感じでエンジン回転が一気に落ち、ストールしそうになる。
場合によっては、そのままエンジンが止まってしまいます。
これは「かぶった」と感じる人もいると思いますが、実際には燃調が薄い可能性があります。
② アクセルを開けると「バババン‥バババン…バ…」となる
もう一つは、アクセルを開けてもエンジンは止まらないものの、
「バババン。バババン。バババ……」
と、明らかにきれいに燃焼していないような音になるケースです。
こちらは、いわゆる「ボコつき」に近い症状で、燃調が濃い可能性があります。
つまり、
「アクセルを開けるとかぶる」
という言葉だけでは、薄いのか濃いのか判断できないわけです。
「ボーッ」と落ちるなら薄い可能性がある
私がまず確認したいのは、アクセルを一気に開けたときのエンジンの落ち方です。
アクセルを開けた瞬間に、
ボーッ……
とエンジン回転が一気に落ちる。
これは燃料が多すぎて「かぶっている」と思ってしまいがちですが、実際には燃料が薄い場合にも同じような症状が出ることがあります。
特に全開域の燃調を確認したい場合は、いきなりアクセルを全開にするのではなく、アクセルをゆっくり開けていってみます。
そして、
最高回転数まできれいに吹け上がるか?
を確認します。
アクセルをゆっくり開けてみる
例えば、全開付近の燃調が薄かったとします。
この場合、アクセルを一気に開けると必要な燃料が追いつかず、エンジンが失火するように回転を落とすことがあります。
ところが、アクセルをゆっくり開けていくと、エンジンは燃料を取り込みながら回転を上げていくことができます。
そして、
最高回転数付近まできれいに吹け上がる。
このような場合は、急開時の症状だけを見て「濃い」と判断するのは危険です。
むしろ、全開域やその過程に至る領域の燃調が薄い可能性を考えます。
逆に濃い場合はどうなる?
では、燃料が濃い場合はどうでしょうか。
こちらもアクセルを開けたときにエンジンの調子が悪くなります。
ただし、薄い場合とはエンジンの反応が少し違います。
濃い場合には、
「バババン‥バババン…ババ…」
というような、エンジンが回り切らない感じになることがあります。
アクセルを開けても、回転がきれいに上昇していきません。
アクセルを9割くらいまで開けても、最高回転数まで上がっていかない。
このような場合は、燃料が多すぎる可能性があります。
つまり、ざっくり言えば、
| 症状 | 考えられる方向 |
|---|---|
| 開けた瞬間に「ボーッ」と回転が落ちる | 薄い可能性 |
| 「ババババ……」と回り切らない | 濃い可能性 |
| プラグがガソリンで濡れて失火する | 濃い可能性 (ただしそれは今か過去からか) |
というように考えると分かりやすいと思います。
ただし、これはあくまで症状からの切り分けです。
キャブレターだけが原因とは限らないので、点火系や吸気系、エンジン本体なども含めて確認する必要があります。
「本当にプラグがかぶっている」場合
ここで、もう一つ注意したいのが「かぶる」という言葉です。
「かぶる」と言ったときに、多くの人がイメージするのは、
プラグがガソリンで濡れて火花が飛ばなくなる状態
ではないでしょうか。
これは確かに「かぶり」と呼ばれる状態です。
プラグを取り外してみると、電極付近がガソリンで濡れてベチャベチャになっている。
その結果、正常に点火できず失火してしまう。
この場合は、燃料が濃すぎることが原因のひとつとして考えられます。
したがって、基本的には燃料を薄くする方向でセッティングを検討することになります。
ただし「濡れたプラグ=現在のセッティングが濃い」とは限らない
ここは意外と重要なポイントです。
プラグを外して、
「濡れている。だから濃い!」
とすぐに判断するのは少し危険です。
なぜなら、そのプラグが濡れた原因が、現在のキャブレターセッティングとは限らないからです。
例えば、
- 始動に失敗して何度もキックした
- エンジンが掛からない状態で燃料だけ入った
- 転倒した
- 長時間アイドリングした
- 別の条件で以前にかぶった
など、いろいろな理由が考えられます。
つまり、目の前のプラグが濡れているからといって、
「今の全開域のセッティングが濃い」
とは必ずしも言えません。
プラグの状態を確認するなら新品が確実
もしプラグの状態を判断材料にするのであれば、できれば新品のプラグを使うのが分かりやすいです。
新品が難しければ、少なくとも一度きれいな状態にしてから、実際に症状が出る条件で走行して確認したいところです。
そして、
どの開度で、どのような症状が出るのか
を確認します。
プラグの状態だけでキャブレターセッティングを決めるのではなく、
エンジンの音・回転上昇・アクセル開度・排気煙・実際の走行フィーリング
などを合わせて判断することが大切です。
「一気に開ける」と「ゆっくり開ける」を比較する
今回の症状で、私が特におすすめしたい確認方法がこれです。
まず、エンジンを十分に暖機した状態で、問題の出る領域を確認します。
そして、
一気にアクセルを開ける
↓
「ボーッ」と回転が落ちるのか?
それとも、
「ババババ……」と回転が上がらないのか?
を確認します。
次に、
アクセルをゆっくり開ける
↓
最高回転数まできれいに吹け上がるのか?
を確認します。
この違いを見ることで、単純に「かぶっている」と考えるよりも、かなり原因を絞り込める場合があります。
全開域ならメインジェットの方向を考える
今回の話は、あくまで全開付近の症状を想定しています。
2ストロークのキャブレターでは、アクセル開度によって影響の大きいセッティングパーツが変わります。
全開域の燃調を確認するのであれば、まずメインジェットを疑います。
例えば、
薄いと判断したならメインジェットを大きくする方向。
濃いと判断したならメインジェットを小さくする方向。
というのが基本的な考え方です。
ただし、実際のキャブレターではニードルやクリップ位置、パイロット系などが複合的に影響します。
そのため、
「アクセルを開けたら調子が悪い」
というだけで、いきなりメインジェットだけを変更するのではなく、どのアクセル開度で症状が出ているのかを確認することが重要です。
・メインジェット(純正±3番手)
→ 合計6種類くらいが現実ライン
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引用元:TOPGEAR KEIHIN FCR・CR・CR-mini・PJ・PWK・PWM用 MJ#□□
キャブセッティングをするなら、まずプラグを用意しておく
キャブレターセッティングを繰り返していると、どうしてもプラグの状態を確認する機会が増えます。
「以前かぶったプラグをそのまま使って判断する」というより、比較用に新品のプラグを何本か用意しておくと、セッティングの確認がしやすくなります。
2ストモトクロス車の場合は、車種によって指定されているプラグが異なるので、購入前に必ず適合を確認してください。
NGKには車種から適応プラグを確認できる公式検索があります。
👇♯8イリジウムが最も実用的です。
また、キャブレターを自分でセッティングするなら、メインジェットやパイロットジェットをいくつかの番手で用意しておくと便利です。
まとめ:「開けるとかぶる」だけでは薄いのか濃いのか分からない
2ストモトクロスで、
「アクセルを開けるとかぶります」
という症状が出たとき、一番注意したいのは、
「かぶる=濃い」
と最初から決めつけないことです。
アクセルを開けた瞬間に、
「ボーッ」と回転が一気に落ちる
のであれば、燃調が薄い可能性があります。
一方で、
「バババババ……」
と不完全燃焼のようになり、アクセルを開けても回転が上がっていかないのであれば、燃調が濃い可能性があります。
さらに、本当にプラグがガソリンで濡れて失火している「かぶり」であれば、濃すぎる可能性を考えます。
ただし、そのプラグが以前に別の原因でかぶっていた可能性もあります。
ですから、できれば新品のプラグ、または一度きれいにしたプラグを使って、実際に症状が出る条件で確認してみるのがおすすめです。
結局のところ、
「かぶる」という言葉ではなく、エンジンがどういう音を出して、どういうふうに回転が落ちるのかを見る。
これが2ストのキャブセッティングでは非常に重要だと思います。
キャブレターセッティングは、ジェットを交換して数字だけを見るのではなく、エンジンの音と回り方を聞きながら、その変化を感じ取ることが大切です。
「開けるとかぶる」という症状が出たときも、まずは一気に開けたときと、ゆっくり開けたときの違いを確認してみてください。
その違いが、薄いのか濃いのかを判断するための大きなヒントになります。
それではまたね。



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