2ストロークエンジンについて調べていると、
「アクセルを戻してもエンジン回転数がなかなか落ちない」
という質問をよく見かけます。
この症状については、「燃調が薄いのでは?」「エアスクリューを調整してみては?」という回答が多いと思います。
もちろん、それが正解の場合もあります。
しかし、私自身の2ストバイクでの経験からすると、高温・高負荷という特殊な運転条件では、メインジェットを濃くすることで回転の落ちが改善するケースがあります。
特に、
- 原付などの小排気量車を数分間にわたってほぼ全開で走らせた場合
- マッド路面など、低速・高負荷が続くエンデューロ(ED)レース
- ノーマルマフラーを装着した状態で、エンジンがオーバーヒート気味になっている場合
などです。
今回は、この「回転落ちの悪さ」と「エンジン温度」「メインジェット」の関係について考えてみます。
一般的には「回転の落ちが悪い=低開度側が薄い」と考える
まず、一般的なキャブレターセッティングの考え方です。
アクセルを戻してスロットルがほぼ全閉になったときの燃調は、主にスロージェットやエアスクリューなど、低開度側のセッティングが関係します。
そのため、
アクセルを戻しても回転がなかなか落ちない
という症状だけを見れば、低開度域の燃調が薄いことを疑うのは自然です。
エアスクリュー式のキャブレターなら、エアスクリューを締め込むことで空気量を減らし、混合気を濃くする方向に調整できます。
ただし、ここで重要なのが、
「その症状が、いつ発生しているのか?」
ということです。
高温・高負荷時だけ回転の落ちが悪いなら話が変わる
例えば、原付の2ストスクーターを普通に街中で走らせているとします。
この状態では問題なく回転が落ちる。
ところが、長い直線などでアクセルを全開にして、
数分間ずっと全開走行
を続ける。
すると、
エンジンがどんどん熱くなる
↓
シリンダーやピストンなどの温度が上昇する
↓
アクセルを戻しても回転の落ち方がおかしくなる
という現象が出ることがあります。
この場合、単純に「スロー系が薄い」と考えてしまうと、原因を見誤る可能性があります。
なぜなら、普通の走行では問題がなく、エンジンが十分に熱くなった高負荷状態でだけ症状が出ているからです。
2ストでは、ガソリンそのものがエンジン冷却に貢献している
2ストロークエンジンでは、混合気がクランクケースを通り、掃気ポートからシリンダー内へ入っていきます。
そのため、吸入された混合気はエンジン内部を通過しながら、エンジン部品の熱の影響を受けます。
さらにガソリンが気化するときには、周囲から熱を奪います。
つまり、
燃料は単に「燃焼させるためのもの」だけではなく、エンジンの熱負荷を下げる方向にも働いています。
2ストのセッティングで、特に高負荷域を薄くしすぎないことが重要なのは、このような理由もあります。
薄い燃調で高温になり、さらに熱的に厳しくなる
高負荷・高回転でエンジンを使い続けているときに燃調が薄すぎると、エンジンは熱的に厳しい状態になります。
そこでメインジェットを大きくして燃料を増やすと、
燃料による冷却効果も加わり、エンジンの熱負荷を下げる方向に働きます。
実際、私自身の経験では、
高温・高負荷状態で回転の落ちが悪くなる
↓
メインジェットを濃くする
↓
回転の落ちが改善する
という現象を経験しています。
したがって、
「回転の落ちが悪い=必ずスロー系が薄い」
と決めつけるのではなく、
「その症状が高温・高負荷時だけ発生しているのではないか?」
を見ることが重要だと考えています。
CRM250で経験した「カンカン」という症状
この考え方を強く印象づけたのが、昔乗っていたCRM250です。
CRM250は公道走行可能なナンバー付き2ストロークバイクですが、これでエンデューロレースに出場していたとき、非常に興味深い症状がありました。
マッド路面などで、
- 低速走行
- 高負荷
- エンジンを高回転まで使う
- 走行風が少ない
- エンジンが高温になる
という条件が重なると、ノーマルマフラー装着時に、
「カンカン、カンカン」
という金属的な音が出て、さらにエンジン回転の落ちも悪くなることがありました。
ところが、チャンバーを装着すると、この症状が出にくくなりました。
当時は「マフラーの違い」としか考えていませんでしたが、今考えると、排気系の温度や排気脈動、燃焼・掃気状態などが複雑に関係していた可能性があります。
「カンカン」という音については、実車を確認しない限り断定はできませんが、高温時の異常燃焼や排気系での燃焼なども考えられます。
このような音が出る場合は、単純なキャブセッティングの問題だと決めつけず、エンジンを保護する意味でも走行を中止して原因を確認したほうが安全です。
「回転が落ちない」=燃料が足りない、とは限らない
ここが今回の記事で一番伝えたいところです。
「回転の落ちが悪い」という症状だけを見ると、
混合気が薄い
↓
スロー系を濃くする
という考え方になりがちです。
しかし、症状が出る条件を見ると、
通常走行
問題なし。
↓
数分間の全開走行
エンジン温度が上昇。
↓
高温状態
回転の落ちが悪くなる。
↓
メインジェットを濃くする
症状が改善。
ということがあります。
この場合は、高開度域の燃調が高温・高負荷時に適正でなかった可能性も考えたほうがよいでしょう。
ただし、常にメインジェットを濃くすればいいわけではない
ここは非常に重要です。
今回の話は、
「回転の落ちが悪いなら、とりあえずメインジェットを濃くしましょう」
という話ではありません。
あくまでも、
高温・高負荷という条件で症状が発生している場合の対策の一つ
です。
例えば、普段の街乗りではエンジンがそこまで高温にならないのに、レースを想定してメインジェットを極端に濃くしてしまえば、
- ボコつく
- 高回転まできれいに吹けない
- 出力が低下する
- プラグがかぶる
- 燃費が悪化する
など、別の問題が発生します。
したがって、普段どのような条件でバイクを使用するのかを考えてセッティングする必要があります。
メインジェットを交換するなら
メインジェットはキャブレターの種類や車種によって適合するものが異なります。
交換する場合は、現在装着されているキャブレターを確認し、適合するメーカー・シリーズのジェットを選びましょう。
例えば、セッティング用のメインジェットを探す場合はこちらから確認できます。
※ジェットは見た目が似ていても、メーカーやキャブレターによって規格が異なります。必ず自分のキャブレターに適合するものを選んでください。
まとめ
2ストロークエンジンの「回転の落ちが悪い」という症状は、発生条件によって原因を分けて考えることが重要です。
通常走行でも常に回転が落ちにくいのであれば、スロージェット、エアスクリュー、二次エア、スロットルバルブやワイヤーなど、低開度側を中心に点検するのが基本です。
一方、
高温・高負荷時だけ回転の落ちが悪くなる
のであれば、話は変わります。
例えば、
- 原付を数分間全開で走らせた場合
- マッド路面のEDレース
- 低速・高負荷走行が長時間続く場合
- エンジンがオーバーヒート気味になっている場合
などでは、メインジェットを濃くすることで燃料による冷却効果が増し、症状が改善するケースがあります。
ただし、これはあくまで高温・高負荷時の話です。
通常走行では濃すぎて、逆に吹け上がり不良やかぶり、出力低下などを起こす可能性があります。
そして、もし「カンカン」「チリチリ」などの異常な金属音まで出ているのであれば、単なる「回転落ちの悪さ」と考えず、ノッキングや異常燃焼、過熱などを疑って、エンジンを保護することを優先してください。
2ストのキャブセッティングは「症状」だけでなく「症状が出たときの条件」を見る
結局のところ、今回の話で一番重要なのはここです。
「回転が落ちない」
という症状だけを見るのではなく、
いつから落ちなくなったのか?
を見る。
冷間時からなのか。
通常走行でもなのか。
それとも、
数分間の全開走行や、低速・高負荷のレースでエンジンが熱くなったときだけなのか。
この違いによって、見るべき場所が変わってきます。
2ストのキャブセッティングは、単純に「薄い・濃い」だけで考えるよりも、
「どのスロットル開度で、どのエンジン温度で、どんな走り方をしたときに、その症状が出るのか」
まで考えると、原因がかなり見えてくると思います。

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