自閉症と知的障害のある長男に、2024年10月頃、大きな変化が起こりました。
それまで自分でできていた食事やトイレ、入浴などが、突然できなくなっていったのです。
さらに、性格や行動も大きく変わりました。
興奮して発狂するような状態になったかと思えば、今度は家から出たくなくなり、リビングのソファーにずっと座っている。
学校にも行けなくなりました。
最初は精神的な問題なのではないかと考え、精神科を受診しました。
しかし、その後アメリカで以前から診てもらっていた医師に相談したところ、
「自己免疫性脳炎の可能性はないか」
という話が出てきました。
そこからステロイドパルス、IVIGなどの治療につながり、現在も日本で治療を継続しています。
この記事は、医学的な解説ではありません。
あくまで、自閉症と知的障害のある子どもに急激な変化が起きた我が家で、何が起こり、どのように治療につながり、現在どうなっているのかを、家族の記録として残すものです。
- もともとは「中度」程度の知的障害でした
- 2024年10月、風邪をひいた頃から大きな変化が始まった
- 精神科を受診し、薬による治療を始めた
- 約6年ぶりに、再びアメリカの医師に相談した
- ステロイドパルスからIVIGによる治療へ
- 治療によって少しずつ生活能力が戻ってきた
- 療育手帳の判定も「中度」から「重度」へ
- 自閉症の症状と、後から起きた病気を切り分ける
- 私たちが治療を受けた医師が、現在はアメリカ政府の委員会メンバーに
- 最近アメリカで注目された「ロイコボリン」
- 「もともとの障害だから」で終わらせていいのか?
- これは「自閉症が治った」という話ではありません
- 我が家の経験が、誰かの「気づき」になれば
- 最後に――「あのとき、気づけてよかった」
- この記事で使用した参考資料
もともとは「中度」程度の知的障害でした

長男には、もともと自閉症と知的障害がありました。
療育手帳上では中度というレベルでした。
もちろん、できないこともたくさんありました。
それでも日常生活の中では、
- 自分でトイレに行く
- 自分でご飯を食べる
- お風呂で自分の体を洗う
- 周囲からの指示をある程度理解する
- 特別支援学校で最低限の授業を受ける
といったことはできていました。
特別支援学校に通っていて、18歳以降の進路についても、いくつかの選択肢を考えることができる状態でした。
例えば、就労継続支援A型・B型など、本人の能力に合わせた進路を検討する余地もありました。
ところが、2024年10月頃を境に、その状況が大きく変わっていきます。
2024年10月、風邪をひいた頃から大きな変化が始まった
2024年10月頃、長男が風邪をひきました。
そして私たち家族が「何かおかしい」と感じ始めたのは、その頃からです。
単純に風邪をひいて体調が悪くなったというだけではありませんでした。
それまでとは明らかに違う変化が、次々に出てきたのです。
風邪をひいた頃から、性格や行動が明らかに変わった
まず目立ったのが、性格や行動の変化でした。
妻が特に感じていたのは、気分の変化です。
テンションが異常に高くなり、興奮して発狂するような状態になることがありました。
ところが、そうかと思うと、今度は逆に塞ぎ込んでしまう。
それまで特別支援学校を休むことなどほとんどなかったのに、
「学校に行きたくない」
「家から出たくない」
というような状態になりました。
そして、リビングのソファーにずっと座ったまま、ほとんど動かないこともありました。
当時の私たちは、
「躁状態とうつ状態を繰り返しているような感じなのではないか」
と考えていました。
もちろん、これはあくまで家族から見た印象です。
長男自身が自分の状態を言葉で説明することが難しいため、私たちは行動や表情、生活の変化から判断するしかありませんでした。
それまでできていたことが、次々とできなくなった
さらに、その後は日常生活そのものにも大きな変化が出てきました。
最初はチックのような動きが出てきました。
例えば、
- 耳を頻繁に触る
- 口元が引きつるような動きをする
- デジタル時計をずっとみている
といった行動です。
そして、それだけでは終わりませんでした。
それまで自分でできていたことが、次々にできなくなっていったのです。
自分でご飯を食べない、あるいは食べられない。
トイレに行けない。
お風呂で自分の体を洗えない。
学校でも先生からの指示が通らない。
まるで、今までできていたことが一つずつ失われていくような感じでした。
私たち家族にとっては、非常に大きな変化でした。
精神科を受診し、薬による治療を始めた
このような変化があったため、2024年の後半、初めて日本の精神科を受診しました。
初めて精神科を受診することになった
当時は、躁状態やうつ状態を思わせるような変化があったため、精神的な問題なのではないかと考えました。
医師からもその可能性を考えて治療することになり、精神症状を抑えるための薬が処方されました。
2024年の年末頃から、その薬を飲み始めたと記憶しています。
特に問題になっていたのは、興奮してしまう状態でした。
そのため、まずはその興奮を抑えることが必要だと考えられたのだと思います。
実際、薬によって興奮した状態は抑えられていきました。
しかし、私たち家族には別の問題が見えてきました。
薬を飲み始めてから、元気だった頃とは顔つきまで変わった
これは、あくまで家族としての印象です。
ただ、私たちにとって非常に強く記憶に残っています。
薬を飲み始めてから、長男の表情が、それまでとは明らかに変わってしまったように感じたのです。
元気だった頃の顔つきとは違う。
目つきもどんよりとしていて、私たちには、薬の影響を受けているように見えました。
もちろん、それが本当に薬の作用や副作用によるものだったのか、それとも病気そのものによる変化だったのかは、私たち家族には判断できません。
ただ、
「何か違う」
という感覚が非常に強くありました。
興奮状態を抑えること自体は必要だったのかもしれません。
しかし、その結果として、
「長男が元気だった頃の姿から、あまりにも変わってしまった」
と感じたのです。
妻と私は、
「これは本当に今やるべき治療なのだろうか?」
「もっと別の原因があるのではないか?」
と考えるようになりました。
そして、この疑問が、もう一度アメリカの医師に相談してみようというきっかけの一つになりました。
「精神症状」だけでは説明できないのではないか?
今振り返ると、この時期が非常に重要だったと思います。
長男はもともと自閉症と知的障害があります。
そのため、本人が、
「頭が痛い」
「気持ち悪い」
「何かがおかしい」
といったことを言葉で説明することは難しい。
医師から見ても、本人の行動の変化が、
- 自閉症によるものなのか
- 精神症状なのか
- 薬の影響なのか
- 神経疾患なのか
- 感染症などをきっかけとした別の病気なのか
を判断するのは簡単ではないと思います。
私たち家族も医学的な判断はできません。
ただ、毎日一緒に生活しているからこそ、
「以前の長男とは何かが違う」
ということだけは感じていました。
そして2025年、再びアメリカへ行くことになります。
約6年ぶりに、再びアメリカの医師に相談した
実は我が家では、長男の自閉症について、以前から海外での治療も受けていました。
コロナ前にはアメリカで治療を受けていた
新型コロナウイルスの感染拡大前、2018年3月頃までに、アメリカへ合計4回ほど渡米しています。
アメリカでは、ロッシグノール・メディカル・センターで、ダン・ロッシグノール医師(Dr. Dan Rossignol)の診療を受けていました。
日本でももちろん、必要な支援や診療は受けていました。
ただ、我が家としては、より積極的な治療について情報を集め、自費でアメリカまで行って診療を受けていたという経緯があります。
ところが2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によって渡米できなくなりました。
それまで受けていた海外での診療や、そこで得られていた薬による治療も継続できなくなりました。
そのため、その頃からそれまで使用していた薬もやめることになりました。
約6年ぶりにロッシグノール医師へ相談

長男の状態が大きく変化したことで、2025年5月頃、約6年ぶりに再びアメリカへ行き、以前診てもらっていたロッシグノール医師に相談しました。
このときには、
- 性格が大きく変わった
- 興奮状態になる
- 逆に塞ぎ込むことがある
- 学校に行けなくなった
- 食事ができなくなった
- トイレができなくなった
- 入浴などの日常生活動作ができなくなった
- 指示が通らなくなった
など、以前とはまったく違う状態になっていました。
自己免疫性脳炎の可能性を指摘された
そこで出てきたのが、
「自己免疫性脳炎の可能性はないか」
という話でした。
ここで誤解のないように書いておきたいのですが、この記事で私は「長男は自己免疫性脳炎だった」と断定するつもりはありません。
私たちが受けたのは、
「もともとの自閉症や知的障害だけでは説明しきれないような急激な変化が起きているため、自己免疫性脳炎の可能性も考えて治療してみてはどうか」
という医師からの助言でした。
そこで提案されたのが、ステロイドパルス療法でした。
ステロイドパルスからIVIGによる治療へ
ステロイドパルスは、治療であると同時に一つの判断材料だった
私たちが説明を受けた中で印象に残っているのが、
ステロイドパルスを行うことで、その後の治療方針を考える材料になる可能性がある
ということでした。
もし自己免疫が関係しているのであれば、治療に反応する可能性があります。
そこで、日本の医師にもこれまでの経緯やアメリカでの医師からの助言について、一生懸命説明し、相談しました。
結果として、長男は日本でステロイドパルス療法を受けることができました。
そして、治療後に良い方向への変化が確認できました。
この結果を踏まえて、その後の治療へ進むことになりました。
その後、IVIGによる治療を継続
その後、長男は日本で**IVIG(免疫グロブリン静注療法)**による治療を受けることになりました。
アメリカの医師からは、その先の治療としてリツキシマブなど、さらにいくつかの治療選択肢についてもアドバイスを受けていました。
現在まで、およそ8か月ほど、月1回程度のペースで治療を継続しています。
海外の医学文献でも治療選択肢になっている
長男の治療を経験してから、私たちは自己免疫性脳炎について改めて調べるようになりました。
すると、長男が説明を受けた治療の考え方は、海外の医学文献に書かれている治療方針とも重なる部分があることが分かりました。
小児のNMDA受容体抗体脳炎についてまとめられた国際的な専門家コンセンサスでは、ステロイド、IVIG、血漿交換などが第一選択の免疫療法として挙げられ、第一選択治療で十分な改善が得られない場合には、リツキシマブなどの第二選択治療が検討されています。
参考:
International Consensus Recommendations for the Treatment of Pediatric NMDAR Antibody Encephalitis
また、米国の研究者らによる小児自己免疫性脳炎のレビューでも、ステロイド、IVIG、血漿交換などが第一選択治療として、リツキシマブなどが第二選択治療として整理されています。
参考:
An Update on the Treatment of Pediatric Autoimmune Encephalitis
もちろん、これらの文献は長男の診断を証明するものではありません。
また、これらの治療を誰にでも行えば改善するという意味でもありません。
あくまでも、
「我が家が受けてきた治療の方向性が、海外の専門家がまとめた治療方針とも重なっていた」
ということです。
治療によって少しずつ生活能力が戻ってきた
治療を続けた結果、長男に少しずつ変化が見られるようになりました。
最近では、家族がある程度促す必要はありますが、
トイレでおしっこやうんちができるようになりました。
また、家族からの指示についても、以前より通るようになってきました。
これは私たち家族にとって非常に大きな変化です。
ipadで音楽を聴いたりパズルをするようにもなりました。
もちろん、まだまだ問題はあります。
- 夜になっても寝ない
- 夜中徘徊する
- たまに突発的に奇声を発する(最近は減りました)
といった症状もあります。
つまり、治療によってすべてが元通りになったわけではありません。
それでも、治療前の状態と比較すると、自己免疫性脳炎を疑うきっかけとなった特徴的な症状については、少しずつ緩和・改善しているように感じています。
療育手帳の判定も「中度」から「重度」へ
この変化は、日常生活だけではありません。
長男はその後、療育手帳を更新しました。
もともとは中度程度でしたが、現在は療育手帳上で「重度」となっています。
18歳以降の進路について学校から提案を受けた際にも、それまでは検討できていた就労継続支援B型なども難しいのではないか、という状態になりました。
現状では、生活介護の施設などが中心になる可能性が高いという説明を受けるようになりました。
それほど、長男に起きた変化は大きなものでした。
自閉症の症状と、後から起きた病気を切り分ける
今回の経験を通して、私たちが特に強く感じたのは、
「自閉症の子どもに起きた変化だから、自閉症の症状なのだろう」と最初から決めつけないことの大切さ
です。
もちろん、私は医師ではありません。
自己免疫性脳炎について専門的な診断をすることもできません。
また、長男の症状が本当にどこまで自己免疫性脳炎によるものだったのかについても、私自身が断定できることではありません。
ただ、長男の場合には、
「それまでできていたことが、ある時期を境に急激にできなくなった」
という変化がありました。
自己免疫性脳炎と自閉症スペクトラムの関係について検討した医学論文でも、自己免疫性脳炎による症状が自閉症に似た症状として現れる可能性などが議論されています。
参考:
Autoimmune Encephalitis and Autism Spectrum Disorder
もちろん、
「急激な退行=自己免疫性脳炎」
ということではありません。
しかし長男の場合は、その変化を「自閉症だから」とだけ考えず、別の病気の可能性を考えるきっかけになったのが、アメリカの医師からの指摘でした。
私たちが治療を受けた医師が、現在はアメリカ政府の委員会メンバーに
ここで、もう一つ我が家にとって興味深い出来事があります。
長男の治療について我が家がアメリカまで渡って相談していた医師が、**ダン・ロッシグノール医師(Dr. Dan Rossignol)**です。
ダン・ロッシグノール医師とは
ロッシグノール医師は、自閉症という診断名だけを見るのではなく、患者ごとの生物学的な特徴などにも注目し、個々の患者に合わせた治療を考えるアプローチを行っています。
参考:
Rossignol Medical Center – Our Philosophy
私たちが初めて診てもらったのは、かなり前のことです。
当時から日本で得られる情報だけではなく、海外の情報も調べながら、家族としてできることを探していました。
2026年、米国政府のIACCメンバーに
そして2026年1月、米国保健福祉省(HHS)は、自閉症に関する米国の研究・政策を担う**Interagency Autism Coordinating Committee(IACC)**の新しいメンバー21人を発表しました。
その中に、ロッシグノール医師の名前が入っていました。
何年も前に日本から情報を探し、実際にアメリカまで行って診察を受けていた医師が、現在ではアメリカの自閉症研究・政策を考える委員会のメンバーになっている。
これは私たち家族にとって、少し不思議な感じがします。
「政府の委員になった=すべての治療が確立した」わけではない
ただし、ここも誤解のないようにしておきたいと思います。
ロッシグノール医師がIACCのメンバーになったからといって、ロッシグノール医師が行っている治療のすべてが医学的に確立された、という意味ではありません。
医学には、
- すでに確立した標準治療
- 有望な研究段階の治療
- 一部の患者で効果が期待されている治療
- まだ十分なエビデンスがない治療
など、さまざまな段階があります。
我が家としても、その違いは意識しておきたいと思っています。
最近アメリカで注目された「ロイコボリン」
ロッシグノール医師の研究分野の一つに、**ロイコボリン(leucovorin、フォリン酸)**があります。
なぜロイコボリンが注目されたのか
ロイコボリンは葉酸に関連する薬剤で、以前からさまざまな疾患に使用されてきました。
自閉症との関連では、葉酸受容体α自己抗体や脳への葉酸輸送について研究されています。
アメリカでは近年、この分野への注目が大きくなっています。
FDAが承認したのは「自閉症全般」ではない
ここは非常に重要です。
2026年3月、FDAは、FOLR1遺伝子の変異による「cerebral folate transport deficiency(脳葉酸輸送欠損症)」に対するロイコボリンを承認しました。
参考:
FDA – FDA Approves First Treatment for Patients with Cerebral Folate Transport Deficiency
ただし、
これは「自閉症全般に対する治療薬」としての承認ではありません。
対象となっているのは、FOLR1遺伝子の特定の変異による非常にまれな脳葉酸輸送欠損症です。
したがって、
「アメリカでロイコボリンが自閉症の治療薬として正式承認された」
と書くのは正確ではありません。
私たちも渡米した際、その影響を一部受けた
我が家も2026年5月にアメリカへ渡米した際、このロイコボリンをめぐる状況の影響を一部受けました。
アメリカで注目が集まっていたこともあり、薬の入手について以前とは違う状況になっていたのです。
これは私たちが狙って経験したものではありません。
たまたま長男の治療のためにアメリカへ行った時期と、アメリカで自閉症とロイコボリンをめぐる議論が大きく動いていた時期が重なったということです。
何年も前からアメリカへ治療に行っていた私たちにとっては、
「以前から研究されていた治療が、今になってアメリカ全体で大きな話題になっている」
ということを、現地で実感する出来事になりました。
「先進的だった」と簡単には言い切れない
今回の記事を書くにあたって、私自身もここは慎重に考えています。
私たちが当時受けていた治療が、
「先進的だった」
と単純に言い切っていいのか。
これは分かりません。
ただ、
「当時の私たちが日本から情報を探し、アメリカまで行って診察を受けていた医師が、現在のアメリカの自閉症研究・政策の議論にも関わっている」
という事実は、長男の治療を振り返るうえで非常に興味深い出来事だと思っています。
「もともとの障害だから」で終わらせていいのか?
今回の経験を通して、私が強く感じたことがあります。
それは、
自閉症や知的障害のある子どもに、急激な認知機能や生活能力の低下が起きたとき、それをすべて「発達障害の症状」として考えてしまってよいのだろうか?
ということです。
もちろん、私は医師ではありません。
自己免疫性脳炎について専門的な診断をすることもできません。
急激な変化があったからといって、自己免疫性脳炎とは限りません。
他の病気や原因がある可能性もあります。
だからこそ、専門の医師に相談して、もともとの障害によるものなのか、それとも新しく発生した病気によるものなのかを、一つずつ確認していくことが大切なのだと思います。
長男の場合には、
「それまでできていたことが、ある時期を境に急激にできなくなった」
という事実がありました。
そして、その後に自己免疫性の疾患の可能性を考えて治療を行ったところ、一定の改善が見られました。
この経験は、私たち家族にとって非常に大きな意味を持っています。
これは「自閉症が治った」という話ではありません
ここは誤解してほしくないところです。
今回の経験は、
「自己免疫性脳炎を治療すれば自閉症が治る」
という話ではありません。
長男にはもともと自閉症と知的障害があり、それ自体がなくなったわけでもありません。
私たちが経験したのは、
もともと発達障害のあった子どもに、後から別の病気が疑われるような急激な変化が起こり、その病気に対する治療によって、低下していた一部の能力が改善したように感じている
ということです。
また、自己免疫性脳炎の治療についても、すべてが大規模なランダム化比較試験で証明されているわけではありません。
小児自己免疫性脳炎については、専門家によるコンセンサスや観察研究、症例の積み重ねも重要な根拠になっています。
そのため、
「この治療をすれば必ず改善する」
という話ではありません。
それでも長男の場合には、治療前と治療後で明らかな変化が見られました。
私たちにとっては、それだけでも治療を続けていく大きな理由になっています。
我が家の経験が、誰かの「気づき」になれば
今回この記事を書こうと思った一番の理由はここです。
自閉症や知的障害のある子どもを育てている家庭で、
「以前はできていたことが、急にできなくなった」
「急激に認知能力が落ちたように感じる」
「行動や身体の動きが、それまでとは明らかに変わった」
ということが起きたとき。
それを単純に、
「障害が重くなったから仕方がない」
と考えるだけではなく、何か別の病気が隠れていないかを医師に相談するという視点もあるのではないか。
私は、長男の経験を通してそう考えるようになりました。
もちろん、急激な変化があったからといって自己免疫性脳炎とは限りません。
他の病気や原因がある可能性もあります。
だからこそ、この記事を読んだ方には、
「もしかしたら何か別の病気が隠れている可能性はないだろうか?」
と医師に相談するきっかけの一つとして読んでもらえればと思っています。
最後に――「あのとき、気づけてよかった」
長男は今も治療を続けています。
以前の状態に完全に戻ったわけではありません。
それでも、自分でトイレができるようになったり、家族の指示が少し通るようになったり。
そうした小さな変化が、私たち家族にとっては非常に大きな意味を持っています。
2024年頃に始まった大きな変化。
その原因の一つとして自己免疫性脳炎の可能性を考え、治療につなげることができた。
そして現在も、少しずつですが改善を感じながら治療を続けています。
今回のことを経験して私が一番伝えたいのは、
「もともと障害があるから仕方がない」と決めつける前に、急激な変化については別の病気の可能性も含めて医師に相談してみる。
ということです。
これは、あくまで我が家の経験です。
同じような症状があったとしても、原因や治療方法は人によって違います。
だからこそ、この記事が診断や治療の代わりになるものではなく、同じような状況にいるご家族が、
「そういえば、うちの子も以前と比べて急激に変わったことがある」
と気づく、一つのきっかけになればと思っています。
長男の治療は、まだ続いています。
これからどこまで改善するのか。
そして18歳以降、どのような生活を送ることになるのか。
まだ分からないことばかりです。
それでも、少しずつでも以前の生活能力を取り戻していける可能性があるのなら、家族としてできることを続けていきたいと思っています。
この記事で使用した参考資料
- International Consensus Recommendations for the Treatment of Pediatric NMDAR Antibody Encephalitis
- An Update on the Treatment of Pediatric Autoimmune Encephalitis
- Autoimmune Encephalitis and Autism Spectrum Disorder
- Rossignol Medical Center – Our Philosophy
- U.S. Department of Health and Human Services – Interagency Autism Coordinating Committee
- FDA – Cerebral Folate Transport Deficiency

コメント